2021年の大晦日にこの記事
いや、思いを綴り始めた。
大晦日というのはあいつにとって、少々特別な日でもある。
親父の誕生日
そう、あいつの親父
あいつからしたらあいつの誕生日
どっちやねん、わかりづらいわ
ということでわかりやすいように登場人物の呼称を決めておこう。
あいつ → あいつ (変わらん)
あいつの親父 → マッサ
とでも呼ぼうか。
話を戻す、マッサは60年前の大晦日に生まれた。
マッサの生い立ちを少し話そう。
3人兄弟の長男として生まれ、貧しい家庭で育ったマッサは少しでも家計の足しになるよう自営の父の仕事を手伝ったり牛乳配達をしたり、身内の手伝いごとなどは自ら率先して行うなどして、とにかくマッサは家のために尽力していた。
そしてマッサは20歳にして最愛の伴侶を得た。2人の男児にも恵まれた。幸せだった。
しかしマッサ30歳の年に全てが崩れた。
尊敬する父、酒の飲みすぎで脳溢血を発症し割と即死。
酒浸りとギャンブル癖で愛する妻から愛想を尽かされ離婚。長男は妻の元へ。
残るのはマッサと次男のあいつ、そして祖母。その祖母も突如として訪れた別離により激しく狼狽し、認知症を患ってしまう。その後、交通事故に遭うなど不運が続き寝たきり状態となり、帰らぬ人となる。
マッサはよくこう言った。
「人生は思い通りになんてならねぇよ、あいつ」
それはそうだ。思い通りになれば願ったり叶ったりだ。そんな楽な人生はあるのか?
いや、思い通りになどならない、だから人生は苦しいとお釈迦様も説いたのだ。
しかしマッサの考え方はこうだ。
「俺はこんなに苦労しているのになぜ報われないんだ」
なんというか、その悔しいような気持ちは分からなくもない。
分からなくもないが、安易に共感できないのは根本的に考え方が違うからであろう。
マッサは苦しむことが幸福のための条件だと捉えているのかもしれない。
だからといってそんなマッサを見て、自分が正しい考え方をしているとは思わない。
マッサが間違った考えだとも思わない。
違う人間だから、ある物事への取り組み方・考え方が違うのも至極当然ではないか。
しかしながら、親子であるからこそ目に余る言動や行動に物申したい時はある。
特に、人を困らせている時などだ。
そんな時にこうじゃない、ああじゃないなどとお説教じみた言葉をかけたとしても聞き入れてくれる間柄でなければ喧嘩のもとでもある。
たとえ、ざっくばらんに話せる仲だとしても、それが続けば関係もこじれてしまうのではないか。
そうなればお互いにストレスでしかなくなるかもしれない。
少々前置きが長くなったが、この先の記事を読むための予備知識と踏まえておいてほしい。
マッサと過ごした時間の中で、あいつが感じ・学んだことをここに綴る。
反面教師として色々と教えてくれたマッサ、ありがとう。
飲みすぎてしまうお酒
あいつ家は元来、大酒飲みの家系である。
あいつの祖父は飲みすぎた翌日に脳溢血で他界しているし、マッサもほぼほぼアル中のため同じ道をたどるのだろうと親族一同感じている。
あいつが社会人となったばかりの頃は、都合が合えば土曜の晩は実家で酒を交わすことも珍しくはなかった。その日も2人で酒を交わして競馬の話かなにかで盛り上がっていた。ビールも日本酒も大いに飲んだ。
「…トイレ行ってくる」
そう言って立ち上がったマッサがトイレに向かう。
あいつの実家はリビングを出たらすぐ玄関である。玄関からトイレに向かうには4m程度の距離はある。
リビングを出て歩みを止めたマッサ。ん?立ち止まるのが妙に早い。
おかしい。
「お、おいっ!!親父!」
あいつの実家は真壁造りの和風住宅で、玄関の上がり框付近に柱が見えている。
ちょうどその辺で仁王立ちしていた。
ジョアー。。。
柱に何かけてんだ?
小便。
お前は犬か。
吾輩は犬である。
黙っとれ。
止めに入ったらかけられそうだから静観する。
出し切ったな、靴にはかかってなさそうだ。
ピン、ピン。
うわ、くさい。あ、ピンピンすんな。
おやすみ。
って寝るなよ。
自分でそうじせえよ。
人にそうじさせんな。
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大好きな子ども達
マッサは子どもが大好きだ。
いつもは仏頂面だけど、お盆や正月に親戚の子どもらの前でおどけてみせるのもいつもの姿だ。子どもを笑顔に、笑わせるために常に全力である。
だからと言ってレパートリーが豊富というわけではない。毎回、同じネタで笑わしにかかる。特にお酒が入るとしつこくなる。
まずは、おひげジョリジョリ。ちょこっと痛いのとくすぐったいのが入り混じり
絶妙に 嫌 だ。おまけになんか 臭い。
でもくすぐったいからちょっと笑ってしまうが、割と早めに激しい抵抗にあう。
次はこちょこちょだ。これも面白いわけではなく、くすぐったいから笑う。おまけにやられてる方はかなり疲れる。もはや犯されていると言っても過言ではない。
この2つの攻撃で子ども達はマッサから離れていく。
ゲームにおもちゃ、ビデオ、遊ぶものはいくらでもある。
笑わされてるほど暇ではない。
万策尽きたマッサは、最後のカードである飛び道具「おなら」を発動させる。
これに関しては前の戯れと異なる点がある。
おならに関して子供は笑いやすい、だからマッサはおならが好きだ。
しかもお酒が入るとしつこくなる、つまりおならの回数も増える。
そしてなんと、おならを運ぶのだ。
「おりゃ!にぎりっぺだぞ!」
折角離れて遊んでいたのに…
しかし子ども達は好きなワードをぶら下げてやってくるマッサについつい反応してしまう。
「うわぁ〜!おならした〜(歓喜)」
しかし
「うっ!すげーくせー!」
臭いのよ。
マッサが無駄に動くから匂いが拡散されて地獄。
温泉?卵?の匂い。
臭すぎて 鼻から 息できない。
でも 口から 吸いたくもない。
つまり 息できない 。
殺すつもりだった?
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元祖黄昏流星群
黄昏流星群をご存知だろうか。熟年カップルの淡いラブストーリーの短編集だ。
ぜひ読んでみてほしい。
マッサは単行本も持っている。
40歳頃、マッサは恋に落ちた。あいつにも紹介してくれた。明るい元気な人だ、お互いバツイチ同士の上、お酒好きな共通点もあり、いい意味で気を使わない関係なのだろう。あいつもこの人とは気は合うし、人として好きだなとも思った。
色々と課題もあったのだろうが、無事50歳を過ぎた頃に入籍をした。
ちょうど入籍して間も無く、実家で一緒にお酒を飲み交わし楽しく過ごした。
ちょっと遅くまで飲んでしまったがあいつは翌日の予定も特になかったため、お昼頃まで自分の部屋で寝ていた。
2人はリビングのこたつで寝てしまったようだ。
朝から2人で出かけたようだがろくに片付いていない。あいつは皿や空き缶を片付け、床に落ちたゴミを拾い掃除を始めた。
すると、こたつの前の座布団の上に見慣れないものを見つけた。
コンドームだ。
何も言うまい。
でもこんなとこに。
寝室でしてよ。
せめてゴミ箱には捨てていただきたかった。
え、でも2人ともここにあるの気付かなかった?
………
座布団の上にそっと戻して家を出た。
おしまい。